愛より重くて恋より軽い

未来の私が読んで楽しいやつ

『りさ子のガチ恋♡俳優沼』感想

どう考えたって能條愛未で『殺人鬼フジコの衝動』も観れないと勘定が合わんのだが?????????くれは聞いてる???????????





【公演情報】
『りさ子のガチ恋♡俳優沼』

原作:松澤くれは『りさ子のガチ恋♡俳優沼』 (集英社文庫
脚本:松澤くれは
演出:岡本貴也

出演
能條愛未

七星うら

横道侑里(W) A
早乙女ゆう(W) B
松村芽久未
須藤茉麻
白柏寿大
及川洸
佐藤友咲
服部武雄
髙木聡一朗
柚木美咲
藤原亜紀乃
芦原優愛
綾野アリス
河本景
松井遥己
山本誠大


【公演日程】
2022年11月3日(木)~11月6日(日)
東京・ニッショーホール

http://www.finepromotion.co.jp/gachi/

26歳独身カレシなし。
普通の地味なOL・りさ子の趣味は舞台観劇。
大好きなイケメン舞台俳優・翔太くんを追いかける充実した毎日。
彼が出演中の2.5次元舞台『政権☆伝説』に大ハマリ中!
最前席で全通!グッズもコンプ!そして高額プレゼント!

「彼の頑張る姿を観られるだけで幸せ」

そう思っていたのに、最近は自分が特別扱いされているような気がする。

出待ち、ネットストーカー、稽古場突撃、カノジョ特定……。
ネットの悪口にも影響されて、りさ子は少しずつ、多くを求めていってしまう。
翔太くんに近づけば近づくほど、心の距離は遠ざかってゆく。

俳優とファン――この関係に、ハッピーな未来はあるのかな?
演劇業界の闇に容赦なく切り込む、見て見ぬふりをしたかった愛憎劇。





これは実際に観る前から懸念していたことなんだけど、『推し』という言葉が一般化し、大して意味も分かってなさそうなPからは「推しに恥かかせないように物販買ってね」とか言われるような時代、明日カノやガ粘獣といったコンテンツがあるこの時代に、やっぱりりさ子の物語はパンチが足りませんよ。改めて調べたら初演は2017年だったので、最早『歴史物』の部類になってしまったなぁと思った。



私はガキさんver見てないので比較できないんだけど、『能條さんのりさ子は若手俳優の女オタクじゃなく、アイドルの男オタク』って言われてたのすごい面白かった。キャストが変わったことにより違って見えるポイントとかガンガン聞きたいオタクなので、この点りさ子は語ってるオタクいっぱいいて大喜び。
推しの顔面だいすきオタクは『恰好が地味とか最早関係なく、あの顔面を覚えられないのは翔太くんに問題があるだろ』派なので、翔太くんの目どころか顔も真っすぐ見られない、というりさ子像はかなり納得いく役作りだったなって思いました。あとコロナ禍以降って若手俳優のオタク見られる()機会めちゃくちゃ減ったしね。

あとは推しがあの俳優ポジションをやってるおたくの感想があまり見つけられなかったのが悔しいなぁ。明け透けに言うけど、私は『マジでこの女、どんな感情で稽古やってたんや……()』と能條さんのおたくなのに思わず口が悪くなる程度には珍獣を見る目をして初日の席に座ってました。
色んなジャンルのオタクのキメラみたいなりさ子を自分に手繰り寄せていった先で、『自分のファンのことを想った』って言う能條さんをやっぱり大好きだなぁと思うのですけど、本当にこの辺りの感情はなーんにも分からん。べらぼうに顔が可愛くて芝居が上手いこと以外わからん生き物すぎ❤そこも好き❤



タイトルなり役者名なり指定タグなりを正式表記で書いてるツイートが見られてないと思ってるわけないだろ、と篠戸るるのセリフ聞きながら思ってたりしたわけだけど、基本的に見られて困ることは鍵開けてるとこで言わないので、良いも悪いも自由に言うし見れば?のスタンスなんですよね私は。
でもそういうオタクばかりじゃないことも理解しているので、そういう意味でりさ子の「知ってほしい」は一定の説得力あるのかもしれないな~と思ったりするなどしました。別に共感できなくても理解することはできる。
りさ子って感情と行動が繋がってないというか、『もっと上手くやる方法なんていくらでもあるだろ』ができない子だなと思っていて、もうちょっとその目の前の薄い板で調べるとか、同僚からノウハウ伝授してもらうとか、考えついたほうがよかったね、とは思う。

思うんだけど、そんなことよりも『あるポイント』からりさ子サイド(りさ子・翔太・るる)の感情と行動に理屈が通らなくなって、その他の俳優サイドだけ理屈で理解できるままになってる、と感じて、個人的にはこの戯曲ってそっちに拘りがあったってオチ?と感じた。
もうちょっと言うと『ガチ恋オタクと推し俳優』で来ていた主題が唐突にズレたというか、悪意を感じるほど詳細に描写していたオタクの解像度が明確に荒くなって、かといってまぁフィクションだからね~、と流すには中途半端なほど他方への解像度が高いままだから訳わかんなくなっちゃったんだよね。
オタク側のことを描写する代償として過剰なほど露悪的に描かれているのかもしれないけど、『りさ子のガチ恋俳優沼』というタイトルの作品でりさ子サイドの話がクライマックスになるところで、『別俳優と付き合ってる女優が演出家と浮気→友人の俳優が出くわして演出家を殴って降板(結果、りさ子の件が片付いても当該作品は初日迎えられるか分からなくなる)』なのって「この作品を見てオタクのことを理解した気になってる俳優はぶん殴る」という感情が一番デカイのか??????と邪推したくもなるでしょ。
散々描かれたオタクの身勝手な感情と対比させるように、俳優にも驕りや短絡的思考があってどっちも悪い、みたいな構図ですらないんだもん。りさ子どうでもよくなっちゃったわ。


パンチのあるタイトルから推測されるような『2.5次元舞台や若手俳優をバカにしてる』作品ではないと思うし、オタクをプ-クスクスって嘲笑してる作品でもないし、まぁあるラインを越えると『マジで言ってはいけない話』になる題材なので肝心なりさ子の山場がファンタジーになるのも理解できるんだけど、とにかくそっちの方が気になりすぎて初演・再演で散々見かけたように観劇したオタクが内省するのが主題じゃなくないか?と感じた。しらんけど。
しかも前述したとおり初演は2017年なので、コロナ禍で色んなことに制約がかかった令和の世では、お見送りハイタッチ会とか含めて1から10までファンタジーとして映る割合の方がそこそこ高そうですらある。りさ子の行動も、今ならストーカー規制法では無理でも誹謗中傷の開示請求通るでしょうし。
個人的に一番のファンタジーポイントは、『令和の物価高と一般企業の給料の安さでは、毎食カップラーメンにしたところで全通とプレ代なんか賄えねぇよ』ですかね。多分りさ子の勤め先テレアポだよな~~~





千穐楽のはなし>
ちょいちょいエゴサする人なのは知ってるものの、こちらの感想が伝わってるか否かは知らんので(当たり前)あれですが、初日に一番特色だなと思っていた『翔太くんから顔を背ける』を捨てたことによって、より一層""獣""だったの最高だな!!!!!!若手俳優オタクっぽくない件を全編腕力で解決しに来ることある????wwww


千穐楽りさ子、若干の陰キャ感は残しつつもスイッチが切り替わってからの方が圧倒的に幸せそうな顔で笑って、困って、心情を吐露するので、完全にホラー演出に寄り添う『化け物』へと変貌してた。これはもうオタクあるあるでも多ジャンルオタクキメラでもなく、『現象の擬人化』に近いなって。人間を象ったなにか。

個人的に「ああ、能條さんだな~」と思ったところは、ワンピースを着替えた後も翔太くんを呼び出した後も、あの汚い姿見と向き合って真っ赤なリップ塗る姿。ティッシュオフまでして何度も何度も塗り直す。包丁を構えた自分のことを認識するのもあの姿見なので、鏡にしか映らないタイプの怪異なんだと思う。
翔太くんから顔を背けるのも、能條さん自身が正面ドストレートから人の目を見て話すタイプだからこそ特色だな、と思ってた点なので、怪異になってもなかのひとはちゃんと能條さんなんだよな……という感慨深さ。

印象として演出はりさ子を『ホラー』だと思ってて、脚本は『誇張した実在』だと思ってて、能條さん自身は『等身大の人間』だと思ってる、という認識のズレが今回の色んな引っかかりポイントを生んだと思ってるんだけど、その上で、初日はマジでホラーだったラストの長台詞が千穐楽であまりにも人間味がありすぎて、逆に『自認が人間の怪異』だったの怖いなぁと感じた。
トルソーを横たえた時点でもう呻き声のような細い泣き声が聞こえてきて、ああこれが怪異の正体なんだなぁと思ったし、冒頭の観劇シーンで瞳孔ガン開きだったりさ子は『修羅場ひとつくぐり抜けて』もっともっと上手に若手俳優の女オタクの皮をかぶったキラキラした目で七星うらくんを見つめる怪異になってたよ。成長する怪異。


私は普段から能條さんの顔サイコー!!!!と思って観劇してるタイプのオタクだけど、千穐楽マジでめちゃくちゃ顔が可愛かったんだよ。いつも以上に『可愛い』を浴びた。支離滅裂なこと言って包丁振り回してるりさ子なのに。こんなの才能だろ!!!!!!wwwww
初日に「若俳の女オタっぽくない」って言ったことをちょっと反省したよね。いざ「普通の女の子」っぽくされるとマジで顔も可愛いので、言動の脈絡無さとかふっ飛ぶし、翔太くんと向き合った瞬間の絵面が完全にヒロインになるんだもん。これは挙動不審オタク程度に収めといた方がいい存在だった。それなのに『手紙のりさ子ちゃん』は分かっても地味服りさ子も派手ワンピりさ子もあの家のりさ子も一切分からない翔太くんは相貌失認の呪いがかかってる『何か』と対面してるのでは?とさえ思うなどしました。
りさ子が単独の存在だからこそとはいえ、能條さんがここまで短期間でガラッと芝居を変えてくることは稀だし、『普通っぽくなってるから怖い』って高等技術の悪用感すごかった。



Twitterの方にりさ子と翔太くんと宮永さんの地獄スリーショ上がってきた時笑っちゃったんだよな。もともと存在してない文脈なのか分からんけど、たぶんほんとにりさ子の『恋』だったのは翔太くんじゃないんですよね。伊藤博文関連の本に付箋貼られまくってたのが一番りさ子のことを愛しく感じたし、キャス変した伊藤博文役に降りて新キャストの解釈不一致でケンカしようぜりさ子。





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