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舞台「DECADANCE」~太陽の子~ 感想

久々の乗船が再びの六本木で、一周回って久々の気がしなかったディスグーニー。初日と29日だけ。





【公演情報】

舞台「DECADANCE」~太陽の子~

作・演出・プロデュース:西田大輔

キャスト
テイラー:塩野瑛久
マリウス:長妻怜央
ジェンバ:猪野広樹
パサド:小南光司

アンナ:白本彩奈
オルタンシア:尾崎由香
エリシア:田中良子
カヤル:中村誠治郎
ユベール:村田洋二郎
グリーン:菊池修司

シェリーニ:芦原優愛
ダナエ:片山萌美
シエル:小室さやか

神父:萩野崇

シオン:谷口賢志

書川勇輝
佐藤佑樹
七瀬彰斗
辻村晃慶
古川貴大
坂田大夢
中土井俊充

ダンサー:LISA-P、長谷川梓、大河内美帆、中野紗耶可、岡本麻海、松野咲紀

【公演日程】

2020年1月24日(金)~2月1日(土)
東京都 EX THEATER ROPPONGI

2020年2月8日(土)・9日(日) 
大阪府 森ノ宮ピロティホール

舞台「DECADANCE」~太陽の子~

魔女伝説のルーツを巡る少年たちの冒険物語。

「この国の王家には二百年に一度、魔女が産まれる。
破壊の言葉を持ったその魔女を生かせば、国は滅ぶ」
ある架空の国の物語。

一つの小さな小さな冒険の話
――4人の少年は幼き頃、探検をした。

その国の一番大きなお城、その地下奥深くにある一つの牢屋に忍び込んだのだ。

「太陽の子」というあだ名を持った、テイラー率いる少年たちにとっての小さな冒険は、
15年後、国を転覆させる革命へと変わることになる。
4人の少年が忍び込んだ牢屋で、見つけたものは―――。







いやもうさ~~~~~~~~~マリウスさ~~~~~~~~~ダメだよ~~~~~~~~~(ダメじゃない)

個別の話はあとでじっくりするんだけど、前回の乗船であるサンママの「グッバイジャーニー」*1を彷彿とさせる要素が多すぎて、やっぱり架空のフランス革命じゃん!!!!!!!!!!ってのたうち回った。再演の頃のダイジェスト映像見て覚悟してたけどそれにしたって。作品の生まれた前後関係が分かんないんだけど、やっぱり西田作品は手を変え品を変え同じ主題を扱うことが多くて、そこがまたしんどさ増す要素なんだよなぁ。合わない人には合わないだろうけど、合う人には永遠に刺さり続けるし、作品を重ねれば重ねるほどしんどい。東京公演後にやったフェスに文音ちゃん来てて、だるまさんがころんだやってるの見れて嬉しかったな~笑
グッバイジャーニー観てるので、デカダンは西田作品初級(もふ虎とか野球とかやさしい西田作品シリーズ除く)だなって感じだったけど、長妻くん界隈の人たちがめちゃくちゃ色々考えてる感想たくさん見かけて、やっぱ比較的取っ付きやすい作品だったよね~と思って楽しくなっちゃった!!!人の感想読むの大好き!!!!

とりあえず1年ぶりくらいに一本足打法で気が遠くなるのは西田作品ならではですよ。王さんね、そのまま『王』ってことなんですよ。ねぇそれリンカネでもやったじゃん!wwwww*2キリストもそうだけど、くっだらないメタギャグだな~って切り捨てることは簡単だし、実際メタギャグなんだけどwそこにも普通に文脈仕掛けてきてオタクを殺しにくるところがこわいんだ。アボカドは知らん。



ちょっとまず小南の話をさせてほしい。読モから若手俳優業にシフトして来てる子って結構な数いるけど、もともとのオタク気質と若干狂気を感じる根の真面目さ*3「推しではないが応援したくなる枠」として私の周りでめちゃくちゃ好感度高い小南。一応あんステ初演の頃から観てるんだけど、今回しみじみとめちゃくちゃ芝居上手くなったね………って思った。いや、これ実はほぼ毎回見るたび言ってるんだけど、でもすごい良かったんですよねパサド。
役どころ的に幼馴染の中でもテイラー・マリウス>ジェンバ>パサドくらいのパワーバランスの役なんだけど、本人がこれまで演じてきたキャラで培った持ち味と西田節がいい感じにマッチしてて、良いキャラに仕上がってた。物語の中核にはなれなくても、らしさとか味があってそれをお芝居一つで出してきたところが、個人的な思い入れもあってゲスト枠の中では一番好きなお芝居だった。
あんまり殺陣経験あるイメージがないし実際そこまで得意ではないと思うんだけど、めちゃくちゃ動ける猪野ちゃんの後に出てきて、スピードとか正確さとか本人の技量的に適わない部分をそのまま役のパワーバランスに投影して「パサドはジェンバより強くない」って描くところが西田演出の上手さなんだよなぁ。仕込み武器で辛勝するあたりとかもそうだし。
そしてここで配役変遷見るわけですけど、リンカネでもお馴染みの塚拓さんがかつてはパサドだったんですよね。塚拓さんと小南って同じ役どころ与えられても出力方向が一緒にならないだろうなってすぐ想像つくので、だからこそ今回のパサドは小南だけのものなんだなぁっていうのが一番感じられて、私は小南のなんなんだ??????って気持ちになるくらいとにかくめっちゃ良かった。



猪野ちゃんも殺陣やってるのを観るのは初めてだったんだけど、初日せいじろのトップスピードがvs猪野ちゃんで出てたことから分かる通り、想像以上に動けてていっそ面白くなってしまった。すっごい。いわゆる若手俳優ってカテゴリー、お芝居もできて殺陣もできるって人やっぱり結構いるんですよね実は。裏を返すとあんまりそこで差をつけづらい状況になってるというか。そういう中でも抜きん出てる身体能力だなって思った。素手のアクションもめちゃくちゃ安定してて、西田殺陣らしい速度が出てるのに安心して見ていられるゲスト枠ってすごくない?
またフェスの話しちゃうんだけど、「船に乗るのが向いてるやつ・向いてないやつっていて、向いてるけど出来ないとか、向いてないけど出来るとか色々だけど、ひろきは向いてると思う(意訳)」っていうのはすごい腑に落ちた。気質/素質と力量/技量のバランスって意味だと思うんだけど、猪野ちゃんってあらゆる意味でバランサータイプなんだなぁって。それは個人の芝居もそうだし、幼馴染組の中での立ち位置とかアンドレいつメンとの立ち位置もそう。本人自体がなかなかぶっ飛んでるのは知ってるんだけどwお芝居でもそういう面がいつか見られるとしたらぜひこの船で観たいなぁなんて思ったりした。



長妻マリウスの話する………?マリウスも長妻くんも好きになりすぎてしんどいんだけど………
まず役どころがめっちゃ好きなやつだったんですよ。そしてそれが似合う。初日時点で公演回数をこなしていって良くなる点ももちろんあったけど、マリウスとして要になる台詞回しを絶対に外さないところに長妻くんの嗅覚の良さを感じた。私は初演・再演観てなくて、ダイジェスト動画だけしか見てないんだけど、長妻マリウスにはいい意味で西田マリウスを彷彿とさせる瞬間があって、そのニュアンスの台詞回しは簡単に出来るやつじゃないよ……!?!?って震えた。フェス情報によると過去の映像見たり稽古場で実演したりとかやってないって言ってたし。素質がある……
ヒプステのあらんちゃんに引き続き、長妻くんも前世ではほとんどご縁がなかったんだけど、すごいかわいくていい子ですね…(ちょろい)マリウスの性格と立ち位置的に、表情で芝居しない方が効果的っていうのは理解してたけど、クライマックスと回想で見せられた笑顔の眩しさがとにかく凄くて、もっと見せてくれ!!!!!って思わず立ち上がりかけた。そういう本人の元々持ってるものを際立たせる緩急のつけ方が上手いのは、お芝居の仕事する上でとてもいいことだなぁ。

マリウスは副題に決して挙がってこない「月の子」と呼ばれているし、本人もそれを覆したかったという想いを口にするけど、実際デカダンのすべてはマリウスから始まってるわけなんですよ。
マリウスが見つけて持ってきた地図で、そこでテイラーたちが見つけたものを拾ってくるときにはマリウスもいて、全部が全部マリウスの想いに帰結していく物語じゃないですかこれは!!!!!!!!!!!!たった一人の!!!!!!!!!大切な人のために!!!!!!!!!!!!!!!!
「俺が欲しかったのは、あの人だけだ」があまりにも完璧で最高で、もうどうにでもしてくれ!!!!!!!!!!!!ってなったし、こういう役者と板の上で出会うために観劇趣味にしてるんだよなぁ~~~~~~~~~って暴れた初日観劇後でした。
西田作品において、脚本演出家の西田大輔当人が演じる役=最強チートなのは、あの人がそもそも劇団主宰なので当たり前なんですけど(座長は一番いい役をやる理論)その理屈を差し引いても西田さん自身、芝居がめちゃくちゃ上手くて殺陣も上手いから文句のつけようがないんですよ。そういう人の役であったマリウスを他の誰かがやるというのはどんなもんなんだろう、という不安はたとえキャストが誰であっても拭いきれるものではなかったので、そういう点を含めても長妻くんはぶっちぎりですごい。



西田作品は『自由に解釈していい』とされてる部分と、『明言はされないが、文法上答えは一つ』とされてる部分があると思ってて、後者に該当するパターンに「キャラAとキャラBの関係≒キャラBとキャラCの関係」みたいなのがある(と私は思ってる)んですけど、今回その最たるものが「マリウスとエリシアの関係≒エリシアと先王の関係」、つまりアンナの出自だったと思ってる。アンナはエリシアと先王の不義の子だから、母の手から取り上げられて牢屋に入れられてたのではないかという話。
デカダンシリーズは1も3も見ていないので、他ナンバリングでも同じ論法が通じるとは一切思ってないんだけど、今回の公演に限って言えば「200年に1度『生まれる』魔女」というのは比喩表現であって、破壊の言葉を発したエリシアこそが魔女のはずなんですよ。そもそもアンナはどうして牢屋に入れられてたのか?生まれた時点で彼女が魔女だとされたなら、なにを根拠に?って考えた時に、マリウスからエリシアに向かって発せられた「もういないんですよ、貴女が『愛した人』は、あの子とともに」って言葉はシオンじゃなく作中で死を明言されている先王を指してるんではないかと。いやシオンも最終的には死んでるけど、西田作品文法的にあの時点では死確定してないので。
不義の子だから魔女伝説を利用して取り上げられてしまって、エリシアは女王として王位を継承することもできなくて、妾腹のマリウスを擁立することもできないから、外から連れてきた正当な血統ではない男を王にしようとしている。けれど実際、不義の子は2歳まで牢屋で育てられてて殺されていなかった。偽りだらけの王家。でもマリウスが催した仮装祭だって、『暴君の仮装をする』って意味だからお前も偽りなんだよ…

西田作品の女性って割と神聖さを背負うことが多いんだけど、ほんとに清らかな場合とそうでない場合があるので、今回のエリシアはどっちでも解釈通るな~と思ってこっちを採用しました。で、そう考えたらマリウスの心境察して余りあるものがない…?
自分が姉に抱いてる感情が【家族としての親愛】と【異性としての情愛】をないまぜにしてるものであればあるほど、当の姉も同じような感情を別の人間に対して抱いていたって知ってるから、その感情を捨てること自体が姉を否定することになるので諦めることもできないっていう………アンナ見つけた時に姉のことを想ったんだろうなとか、幼馴染で育てて「甘やかすな」って言ってた時にはもう王家の血筋として見てたんだなとか、そういう一つ一つの経験の積み重ねが彼を大人にしたんだよ。
29日ソワレで最後にマリウスを見送った後のエリシアのマイクオフの祈り「かみさま、どうかマリウスを、どうかおまもりください」って言ってて、エリシアはほんとに弟から向けられた感情を親愛としてしか受け取ってない。そうであることがマリウスにとっては不安であり、安らぎでもあるんだよな……って無限にしんどいループに突入してた。



さて、これだけマリウスに夢中だったわけですけど、今回のデカダン副題として採用されてるのは『太陽の子』、つまりテイラーなんですよね。なんだけど、ぶっちゃけテイラー全然真ん中にいる感じがしないんですよ。この扱い方がちょっと珍しいなって思って。2.5とか含めてぼちぼちな数の西田作品観てるんだけど、初めて出会ったパターンだったという解釈をした話をします。
またグッバイジャーニーの話しちゃうんだけど、主人公であるジャンヌは祖国フランスの長き冬を終わらせるために「神の声を聴いた、ということにしろ」と言われて旗印として担ぎ上げられる。文音ちゃん演じるジャンヌは、それこそアンナのように初めて剣を握って自分という旗印を信じてくれる人たちのために春を呼んでくれる存在で、今は亡きブルーシアターに響き渡った「春だ!!!!!!!」って声を一生忘れられないんだな私は。
こういう役自体は西田作品によくあって、てっきりテイラーの『太陽の子』『太陽の中心』もこのパターンなんだと思ってたから、初日時点であんまり良くないというか完全にマリウスに食われてないか???って思ったし、塩野くんそういう役を振られてるの理解できてないのかな?とさえ思ったんですよね正直。ただ、恐らく長妻くんが演じるにあたってかなり脚本を変えてるであろうマリウスに対して、敢えて塩野くんにあてがったテイラーがそれでOK出るとは到底思えなくて、これもしかして子供時代にそういう存在であったテイラーが、大人になっても周囲にそう求められることが『犯した罪に対しての罰である』っていう物語なのかな、って。今まで出会ったことないパターンなので確証ないんですけど。

ラストシーンとイメージシーンの掛け合わせ、初見の時はこれまでの経験則で幼馴染全員死んでてアンナとエリシアだけ生き残ったパターンだな、って思ったんだけど、多分テイラーだけが生き残ってるんですよ。
まずマリウスはあの牢屋で明確に事切れるお芝居してるの確認できてて、でも後世では「暴君であったが、この国の礎を築いた」って名前が残ってる。(ここはフェスで、時系列的に今作の後の話であるデカダン1の冒頭シーンを見せられたことで判明した)そしてジェンバも、同じ情報屋だったシェリーニが連名でこの革命の記録を本として残したことによって、誰かに知られるような大きなことを成していなくても名前が残ってる。この2人に『罪』を紐づけるとしたら王家を滅亡に導いたとか、そもそもアンナを拾ったとか、可能性はいくつかあるんだけど神の使い、天使であるオルタンシアに『罪』を指摘されるのはテイラーだけ。
じゃあそのテイラーの名前はどう扱われているかというと子供の頃と同じ『太陽の子』として掲げられていて、カヤルの言葉を借りるなら「馬鹿げた夢」を幼馴染たちに、国民に見せたことが本人の意思とは関係なく『罪』。魔女としてアンナが発した言葉はもともと、かつて太陽だったテイラーが発した言葉だからね。ならば一人生き残って『太陽の子』であり続けること、たとえ『太陽の子』でなくともテイラーを必要としてくれるアンナの未来を守り続けていくことが『罰』なんだろうなって。
テイラー自身も『太陽の子』という子供の頃のアイデンティティに縛られ続けているから、担ぎ上げられる中で現実とのギャップに苛まれていて、それでもシエルやアンナのように自分が子供の頃のような『太陽の子』でなくても必要としてくれる存在に気付くことで、結果的に『太陽の子』を背負い続ける覚悟を決める物語だからこそテイラーは生き残らなければいけないんですよ。死ねたら楽なんだけどね。マリウスが見つけてきた新しい地図はこの国の新しい形であって、それを託されるのは『俺たちの真ん中にいるテイラー』であることが『パサドがいないのは嘘の待ち合わせ場所教えたから』と同様に、あの牢屋で幼馴染たちがお互いの関係を幼馴染として終えられる唯一の道なんだよなぁ……マリウスがエリシアへの想いを告げることも諦めることもできなかったのと同じ構図。





今作、大阪公演になってもかなりお芝居の解釈の余地に揺らぎがあったっぽくて、いつも以上に委ねられてる部分多いなって感じたんですけど、そういうところが好きなんですよね西田作品。っていう再確認をした心地。この船が天下取る瞬間に居合わせたいなぁって思うし、長妻くんは定期的に乗船してほしい。よろしくお願いします。


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*1:From Three Sons of Mama Fratelli

*2:三国志モチーフの西田舞台「RE-INCARNATION」シリーズ最新作RE-COLLECTの話。 リインカーネーション リコレクト RE-INCARNATION RE-COLLECT

*3:あんスタイベ爆走して3桁位入ってたり、ブタキン出演決まってプリティーリズム・レインボーライブ全51話完走したり