愛より重くて恋より軽い

未来の私が読んで楽しいやつ

『髑髏城の七人season月 上弦の月』千穐楽

皆が卒論とか作文してるのを読みながら、どうしてもどうしても終わりたくない未練で駄々っ子になってるんだけど、それはそれとして千秋楽のめもは残すべきなのでとりあえず書きます。卒業文集は気が向いたら、というか修羅天魔始まったら腹くくって追記すると思う。今はまだいやだ。→腹くくってポエムかいたよ!(3/9)

 

 

 

 

 

 【2/20 千穐楽

荒武者隊歌「サライ
途中から歌わず
「楽しかったー!」\荒武者隊!/
「みんなで遊んだー!」\関東荒野!/
「ぼくらの癒やしー!」\無界の里!/
「すきだー!太夫ー!」
ほんとに卒業式だったよ、上弦。

「話が違う!」って兵庫を指差すきりちゃんと、その指をぎゅっと握り込む兵庫のちっちゃいものクラブ。かわいかったなぁ。指を二本立てて、二千じゃないのかよ!って感じで訴えるきりちゃんが兵庫の「まだ終わったわけじゃねぇ!」にもう片方の手も指を二本立てて、二千じゃなくて!?四千!?みたいな反応してた。圧倒的かわいい。

「渡京まってよ~はやいよ~……きたー!!!きりちゃんかわいいが大爆発です。多分追いかけてくる髑髏党のこと言ってるんだと思うけど、かわいすぎて顔覆いそうになった。

「俺が赤針斎なんだ。熊木衆の長は俺だ」語尾が入れ替わるだけで強さが際立つきりちゃんだった。もう上弦きりちゃんは泣いたりしないんだよ。捨を助けるために真っ直ぐ走り出すんだよ。

「君はできる子だー!」「うん!」18マチネあたりからやり始めたこの太夫と兵庫のやりとりがすっごいすっごいかわいくて好き。

「しっかりしろ!お前俺に言ったよな、地の男だって!」最後まで捨に喝を入れてくれるのはきりちゃんでした。

「捨之介が天魔王ではないことは、お殿様だってご存じのはずだ!」たぶん顔つきが変わったきりちゃんが唯一感情に身を任せた瞬間じゃなかったかなって。本当に必死で、死に物狂いで半蔵を振りほどいて家康に噛み付こうとするきりちゃん。かっこよかったなぁきりちゃん。大好きだよきりちゃん。


「殿が貴様に!?」って言い方がすごく強くて、天魔の言葉を全然信じてない蘭だった。真名呼びはかくん、って項垂れてしまったけど、右手で数珠握って、それを見つめながら左手でも握る仕草と表情にはちゃんと無界屋蘭兵衛としての意志があって、ああ今日の蘭はそれくらいじゃ動じないなんだなって感じた。あの数珠には殿を弔う気持ちがあるからこそ縋っていたもので、遺骨とかではないけど大事なものなんだなぁ。

どこかでピンマイクがぶつかったか何かしたのかな?右側の顔周りの髪上げてるヘアピン触ってたら外しちゃったみたいで、顔周りに髪落ちてきちゃってた。無界に戻ってきた時には直してもらえてました。鬘、最終日までよくがんばったね……

じん平さんダンス、あられもない箇所を見せていたそうな。ガールズがぎゃー!ってなってる中で天を仰ぐ蘭はやっぱり何度見ても美しいし、足組んでおももに『五百枚』って言ってる時といい、顎のラインがいいんだよなぁ。

須賀大明神、本当にありがとうございますお疲れ様でした映画全部見に行きます!!!って幕間一番に言うくらい、今までで一番に最高なヤクザビンタだった。すっごい良い音した。ビンタかました後の蘭、太夫にやめなって、と諫められてるのにガールズとビンタモーションしながらやってやったぞ、みたいな感じで話してて本当に子どもでした。

兵庫のぺ?にガールズや太夫ぺ?って返してたんだけどそこに蘭も入ってたの感動したよ。さらにそれを真似するみたいに捨も低音でぺ?って返しててもう無界屋仲良すぎ問題。

捨に「天魔王を止める」っていわれて目を見開いて驚くのに「殺すんじゃねぇ、止めるんだ」って言葉を耳にしてそっと目を伏せてうつむき、顔上げて決意の顔を見せた蘭がね、太夫「昔には戻れない、戻っちゃいけない」って言葉聞きながらみるみるうちに目が潤んできてたんだよ。こんなにすぐ態度と表情に出ちゃう人だから、あの決意の表情に太夫が気付かないはずがないんだよ。

裏手に出て、無界屋を振り返りながら数珠を握って太夫って言ってた……よね…?上弦の蘭と太夫はこれまでと関係性が違う、姉弟のような親子のような結びつきがあるからこういう仕草の一つ一つから蘭の無界屋への感情が読み取れる箇所が多くて、それがすごく好きだなって思った。

「現れやがったな、ぞろぞろと」肉眼でも分かるくらいにやりと口端上げて笑った蘭の跳躍がしっかり2回あった時点でもう涙腺が決壊してたし、今日の蘭はあまりにも無界のために髑髏城に向かう蘭すぎて絶対勝てない、って思ってしまったことがすごくすごく100点満点の蘭だなって思った。二幕冒頭の「蘭兵衛だ。無界屋、蘭兵衛」もちゃんと蘭兵衛さんの声で、この人ちゃんと大商いしに来てるよって思った。

「自分ならもっとうまくやる、そうも思っている」「そんなことはない」の前にハハッて笑ったんですよ。蘭が。ちゃんと対等な大商いできてる。「商売の話だ」も無界で見た蘭と同じように喋ってるし、とにかく二幕なのにまだまだ無界屋蘭兵衛だった。餅ドンは左足でした。全部盛り蘭兵衛さん。

「お前を斬るのはこの私だ」ここの二人称って今まで『貴様』だったよね?前楽も『お前』だったので一瞬震えた。

「殿は『生きろ』と言ったのだ!この俺にどこまでも生き延びろと!」両手で頭を抱えてかぶりを振る瞬間が多くて、「殿が最も愛したお前と共に」の前の「やめろ!」って叫ぶ時もぎゅっと目を瞑って蹲ってしまったのがもう、もう、さっきまであんなに強かった人がこどもになってしまっていて、本当にすごかった。

今日もよく夢見酒がキマってる蘭。ニヤァっと嗤ってる時がすごい多かったんだけど、時折数珠というか心臓のあたりをぎゅっと握って抑え込むことも多かったし、「奥の間で軍議を」って声かけられる前は数珠を握って唇を寄せるように口元で握りこんでたのが今日の夢見酒のタチの悪さを垣間見た気分だった。アッパーとダウナーのふり幅が広すぎるし、すぐに効果が切れる。

ボウガン持って無界屋入ってくるとき、黄平次たちのことを見ずに真っ直ぐ前じゃなく、少し俯いてる蘭。全然太夫の知らない蘭になれてない蘭。ガールズ斬ってる時、一太刀一太刀の重さに覚悟を込めてるようだった。「蘭兵衛ではない、蘭丸だ」のダウナーっぷりがすごくて、見た目がどれほど鮮烈に変わっていてもどう見たって蘭兵衛だった。天と共に生きること、それたった一つだけを選んでそれ以外のすべてを今から捨てようとしている蘭兵衛だった。天魔と、ではなく天という存在を選ぶということ。蘭丸修羅道

「たのしいなぁ、てんまおう」声が震えていて「こんなにも楽しいことを、何故俺は忘れていた」全然笑えてないどころか完全に泣いてたんだよ。それ本当に楽しいのかな。それが楽しいと思っていることが、天と共に生きる森蘭丸であるという事実を自分に刻み付けているようだった。千秋楽で「くだらぬ意地を」張らなければ、死ぬこともなかったのに』ってことなのかなって初めて思った。殺さなくてすむなら殺したくなかった。蘭がずっと苦しそうに泣き出しそうで、呼吸が浅かったのが見ていてしんどかった。首を倒す、とか半身だけ引く、という形で避けてた太夫の弾をこの日はマントで庇うように避けてて、一瞬、ああここで死んでもそれはそれで天と共に生きることを全うしたことになるのかな、って思ってしまって、それを蘭も思っていたらしんどいなぁって感じた。

天蘭ラスト。「なんだと」って言った時点でうなだれてしまっていて、目の前の天魔が完全に見えなくなってる蘭「お前もまた私の駒だ」って言われた時に「貴様!」って叫ぶ前の慟哭が本当につらくて、でもだいすきなんですよ。無界にいた時には絶対に見せなかった、獣の慟哭。

死に方が好きすぎる上弦蘭。一度目の「来い」瀕死で、二度目の「来い」掠れて力の入らない涙声で、それでも最後に「来い、太夫!」って叫んだ時、蘭はちゃんと自分の行いが外道であることも、それを太夫に止めさせることの非道さも飲み込んでるんだなって思って、ああやっぱりこれはどの蘭にもできない蘭の姿だなって思ったなぁ。そして目を見開いたまま死ぬ蘭、たぶん初日とライビュでしか見れてなかったのですごいありがとうだった。あの大きな目が太夫を見つめたまま死んでいく。

上弦蘭は自分が加害者なのに、加害者になりきれない弱さがどこまでも人間らしくて愛おしい。超自分勝手なやつで一切同情の余地もない無界屋蘭兵衛というキャラクターの中で、多分唯一その自分勝手さも含めて愛せる蘭だったよ、上弦蘭。


「今の私に天魔の鎧はない」「そんな剣でそんな覚悟で」もう対等にこどもの喧嘩に見えてきてしまう不思議。多分今日の天魔には自分が蘭の上位に立って事を運ぼうという気がないからだと思う。一切の理論性がない、感情論だけでの揺さぶりだからこそ、一族の長として一番前に立ってたきりちゃんから見ても支離滅裂なこどものやりとりだったんだろうなぁ、この二人。

ぎゅっと押し潰すようにしてる天魔多かった。蘭が天魔の腰に腕を回したところで「この杯で飲み干せ」って言いながら上半身を前に倒して蘭押し潰してる感じ。髪を掴んで顔を上げさせた時の高低差が出ていい感じ。もう一か所は「待て、天魔王」と蘭に声かけられてから次の言葉まで少し間があったので、おもちゃを隠すこどものように既に落ちてるきりちゃんの頭をぎゅっと抱きかかえてた。観客の情緒を思いっきり破壊しにくるのやめてほしい。

「収まる必要がどこにある」の収めの芝居すごかったなぁ。捨蘭の感情がめちゃくちゃに爆発しているくだりの中で、二人とも各々の方向で泣いているのに一人だけ穏やかな水面みたいに静かな天の佇まい。天魔としての在り方であって、役者として板の上のバランスを見てるときの太一さんの姿だった。だいすき。

蘭に庇われて「蘭丸!?」って驚いたあとに一瞬うっすらと笑ったんだよ。嘲笑だったんだと思うけど、蘭の言葉を借りるなら天魔はあの時なにを勘違いしたのかな、って考えてしまった。前々楽あたりからかな。蘭が両手で天魔にしがみつくと、蘭を支えていた手を離して両手を挙げて、自分から蘭に触れないようにしていたんだけど、あれは怖れなのかなぁ。

「俺は、俺は、私は、天だ」って言うときの声がもう全然天魔王じゃないし、「だったらその仲間も道連れだ」ぐちゃぐちゃの内臓の中を這いまわるような声だった。それでも最期に「捨之介」って呼ぶ声は口説きで蘭に見せていたようなあの声で、やっぱりあれが人の男なのかなって。


「マジで福士捨のテンションめっちゃ不安だからみうらんビンタ一発食らってから六天斬り挑んでほしい(幕間のツイート)いや、ほんとに無界屋ララランドの後に狸穴さんを見てにっかり笑顔だった福士捨を見て、あっ今日もだめかもしれない……って思ったよ笑

捨、武器庫のところで過去回想する辺りからもう泣いてて、「俺はそのためにここへ来た」ってきりちゃんに言ってる辺りもまだちょっとだめで、福士捨の場合は完全に計算とか意図したお芝居じゃなく、なかのひとの感情の昂りからきてる涙なのが伝わりすぎてエモ死の嵐だった。一幕ふにゃんふにゃんで今日もだめかもしれないと思っててごめんなさい。

百人斬りの開幕の捨が吠えるの、最後に見られてよかったなぁ。あれすごい好き。殺陣のシーンやればやるほどエンジンかかっていく福士捨にとっては六天斬りに向けての準備とすら思えるんだけど、「天魔王!天魔王はどこだ!」って言ってる時点で声が震えていて、たぶん今日の百人斬りはここまでのカウントダウンなのかなぁって。

六天斬りずっと泣いてた捨、人を殺した経験があっても曇ることのない純粋を持っているように見えたよ。上弦捨は捨之介であり、福士くんだったから、千秋楽で芝居中に泣いちゃった、とはちょっと違うんじゃないかなって思った。あれはちゃんと役としての涙でもあって、そこにめちゃくちゃ感情を乗せていたのが福士くんだったという構図。「お前も!蘭兵衛も!」って泣いてたのが観客としてもキツすぎた。天魔に喋ってるときずっと泣いてて、天魔も泣いてて、天蘭の口説きもそうだったんだけど、殺陣以上に感情のぶつかり合いだったのがすごく上弦の捨天蘭を表しているなぁって思った。

化楽天兜率天になっちゃったの、私は全然気づかなくてw やっぱり音の記憶弱いなぁ。そんな幻の化楽天の後の捨と天魔が組み合うところ、公演序盤の頃はここが噛み合ったらすごい気持ちいいんだろうなぁって思ってて、あの時の期待以上のものが見られたよ。すごかった。こちらがエモ泣きするより先に本人が泣いてたけど。

天魔が斬鎧剣で腹を刺した時、一瞬捨は引かなかった。「馬鹿野郎!」って言って止めようとして、それを天魔が笑って押し退けたのが月髑髏における捨と天が、今までよりずっとずっと距離感の近い存在なのに絶対に交わらない隔絶の象徴だった。転がり落ちて追いかけそうだった捨は文句なしで今日が一番やばかったし、きりちゃんが止めてるのにまだそのまま進もうとしていて、本当に今目の前で起きた光景以外なにも見えてないんだなって感じた。

開演前も幕間もバタバタで、全然千穐楽の心構えができなくて、シーンが進むごとにうわっ終わっちゃうやだ………ってなってたのに、福士捨がぼろぼろに泣きながら零すように「この髑髏城、みんなで生きて抜け出して、また会うぞ」って言ってくれたから、また会うために終わろうって思えたよ。このエモさ、5年くらいさかのぼったところでしか経験してない。福士くんって天性の0番の人だから、そもそも真ん中に立っていることは呼吸をすることと同じくらい自然なことで、だからこそ千穐楽の髑髏城を抜け出していく姿を見ながら、この人が私のだいすきな上弦の座長なんだなぁって気持ちでいっぱいになった。それと同時にこんなにも自分の気持ちに正直で自由な捨之介を生んでしまったのはカンパニーと客席の責任なので全力で愛していこうって思ったよ………あのシルエットのシーンで刀掲げちゃう捨、間違いなく後にも先にも福士捨だけでしょ……笑


ぐるぐるカテコ。捨天蘭出てくる前に捨が出てくるときのカン!カン!カカン!っていう拍子木SEが鳴っちゃって、きりちゃんはなに???ってきょろきょろしてるし、兵庫は狸穴さんとなんだろ?これ?って拍子木打つ真似してたり、最後までちっちゃいものクラブはかわいいがいっぱいだった。煎餅撒きで一緒に曲にノッてる天蘭が見られたり、福士捨が煎餅届けに最前列より近い距離っていうかほぼ真横まできたこと、とてもいい思い出でした。

 

 

 

 

【髑髏城の七人 season月〜上弦の月〜とかいう青春】 

3/9ですね!流れる季節の真ん中で、ふと日の長さを感じる今日この頃!ここからは上弦総括なんですけど、ただのポエムだしただの自分語りなので、各役の話が知りたい人は過去の感想まとめをご覧ください。

 

 

 【公演前に考えてたあれこれとしょへさん】
キャスト発表された日は、たぶん太一さんのことしか考えてなかった。鳥天に見事一矢報いられて、どんなに捨が祈っても絶対に殿の下には行けなくなった蘭が、案の定地獄に落ちることさえできずに輪廻に則って天魔として戻ってくる。やっぱり地獄も極楽もすべては生の内にあるんですよ。御愁傷様でした、という気持ち。(私は鳥蘭すっごい好きです)

鳥が終わって、次に考えたのは殺陣のこと。福士くんは殺陣というかアクション経験はあった気がするし、ライダー主演がすごく気力・体力を使うもので超例外を除けば運動神経の良さが担保されてることを知ってるので、まぁ最後の捨天戦はどうにかなるだろうと思ってた。

翔平くんは、どうなんだろう。友達の友達が昔好きだったことくらいしか、私は彼を知らない。スポーツとかは得意そうだけど、殺陣はどうなんだろ。蘭個人が殺陣できないのは、私は別にアリだと思ってるけど、それで天魔というか太一さんの殺陣が控えめになるのはちょっとなぁ。なんて思ってた。

下弦の方も一通り同じようにいろいろ考える。こちらは個人的に演者としてすごく信頼している人たちが捨天だし、兵庫もクオリティ担保されてるし、周りから聞こえる不安視の声は多いけど、全然大丈夫ですよ、って話してた。

上弦だよ、やばいのは。正直、一番未知数というか、知らないことが多すぎる翔平くんが一番不安。お芝居どうなんだろ。たぶん出演作いくつか見たことあるけど、パッと浮かんでくる役とか良かったシーンとか全然出てこない。なんでもソツなくこなせるけど、器用貧乏っていうか、印象に残るようなお芝居するタイプじゃないのかもなぁ。

顔は世間一般でいうところのイケメンだとは思うけど、私は全然タイプじゃないんだよな~これ蘭大丈夫かな~いくらなんでも相手役がダメだったら太一さんもMAXの力は出せないだろうし、上弦で確実に安心できるのは兵庫と太夫と霧丸くらいだよ~


って思ってましたすいませんでした。

結果はみなさんご存知の通りです。三浦翔平、圧倒的に顔がいい。芝居がいい。最高だった。公演開始前の私の心境を吐露することで浅はかな自分への戒めとします。

超自分勝手に生きて、超自分勝手に死んでいく、一切同情の余地のない無界屋蘭兵衛、というキャラクター像は誰が演じようと、たとえそれが太一さんであろうとも私の中で揺らぐことはなくて、それを度外視して好きだなぁってちょっとでも思えたのはこれまで兄者こと花蘭だけで、そんな私が大声で無界屋蘭兵衛が一番好きです!って言える唯一の蘭が上弦蘭だった。最早年明け以降は翔平くんの蘭を見るために豊洲へ通っていたと言っても過言ではない。日に日に増える蘭レポを見ればお分かりいただけるでしょう。

殺陣もお芝居も心配してた時間は完全に無駄だった。そんなことを心配している暇があったらチケットを探しててほしかった。太一さんの殺陣や所作の癖が移っているのは初日に感じたけど、それがただ真似しているだけじゃない、と見てわかることがすごいと思った。本人は言葉にしないし、もしかしたら意識していないのかもしれないけど、その仕草や動きをなぜやる必要があるのかを自分で考えた上で取り入れているように見えた。ただ綺麗だからやる、とかじゃない。たぶんこれは師匠である(と勝手に呼んでる)太一さんの所作を見慣れてるからこそ感じられることだったと思うけど、翔平くんの動きが単純な真似かそうじゃないかは一目瞭然だった。

太一さんの殺陣や所作は、今どきの漫画で新キャラ設定です!ってこの半生を出してこられたらリアリティに欠けるからボツ、って言われても致し方ないような、すごく稀有な時間の積み重ねの中で培われたもので、それをこんなに正面から『技術』として習得しようとする人が現れるんだなぁって、いっそ新鮮なほどだった。

翔平くんがキャスト解禁時から口にしていた太一さんへのリスペクト、正直リップサービスだろうと思っていたし、映像畑で活躍してる役者はそういうことは出来て然るべきだと思っていたからあまり気にしていなかったんだけど、本当だったんだなっていうのを板の上で見せられてしまったのでもう黙るしかない。これを計算でやっていても無意識でも、やはり頭がいい人なんだと思う。

あと、よくよく振り返ってみたら翔平くんの出演作でも好きだなぁって思う役は結構あって、単純に私がそれを=三浦翔平と認識できてないだけだった。ばーかばーか!1ヶ月足らずで手のひら返しやがって!とうとうFCにまで入ってるこの展開を笑うための前振りだと思って、一連の失礼な発言をお許しください!

映像畑の人ってすごいですよね。太一さんが役作りの話を聞かれるときに『板の上でのやりとりで生まれるものがある』という趣旨のことを言うことがあるんだけど、映像畑の人たちはそのやりとりが日常的なんだなって感じた。上弦は、意図的であれコンディション由来であれ、誰かのお芝居が変われば相手が応える、っていう現象がそこかしこで起きてた。

蘭は能動的に動く要素が少ないから、翔平くんはその中でも誰かの変化に応える側が多かった人だった。最終ブロック、もちろん太一さんが変えてきた部分はあったけど、それは誰かとのやりとりよりも単独の見得切り部分に多かったと思っていて、それなのに蘭があれだけお芝居を変えてきたのはすごく能動的な変化に見えた。今まで応える側が多かった翔平くんがそれを出してきたことにすごく興奮したし、本当に最初から最後までわくわくだらけの公演だった。毎週ぶった切り連発するラジオ楽しすぎるのでまた一つ人生が豊かになるエンタメを手に入れた気分です。

 

 

【やっぱりたいちさんはすごい】
歴代最年少天魔王、って言われてそうか、と思った。初日が始まるまで、なんにも心配することなんてなかった。だって太一さんだから。むしろ周りに対しての心配ばかりがあった。(しょへさん項参照)それなのに、正直に言うと初日の天魔王はあまりにも未來さんの鳥天魔が顔を出す瞬間が多すぎて震えた。二度、蘭としての生を受けた太一さんにとっての天魔は確かに未來さんで、でもだからってこんなことあるのかと思った。

次の公演、絶対にこれが修正されるという確信があった。完全に経験則です。案の定そこから先の公演には一度も未來さんの影はなくて、本当に初日だけの幻だったんだなって胸を撫で下ろしたことを覚えてる。以降の公演で未來さんっぽい、と言われてるのを何度も見かけたけど、初日のあれに匹敵するものは一つもなかったと思う。それくらい、すごいことになってた。太一さんでも、あんな風になるんだなって思った。上弦、本当になにが起こるか分からない公演が始まったんだな、って思った瞬間だった。

出番が少ないからラクだと思う、と言ってた天魔王。たぶん全然ラクじゃなかったと思う。単独でいるシーンはほぼ存在しないので、観に行った回でアクシンデントが起きた時、いつも板の上には天魔王がいた。

アクシデントなんてない方がいいに決まってる。それを前提とした上で、そのリカバリーをする太一さんの姿は結構レアだったと思う。慣れた相手なら太一さんが方向を決めればテレパシーめいたもので一緒にリカバリーしてくれるけど、上弦はそういう場じゃなかった。準劇団員、俺たちの太一、と呼ばれる新感線だけど、決してホームではない状況にあった太一さんが、カーテンコールで笑ってるのを見られると嬉しかった。人里に下りてきて、人慣れした太一さんを見られる現場はまだまだ多くないから、これはひとえに須賀くんがいっぱい遊んでくれて、遊ばれてくれたおかげだと思う。

長期間公演に慣れている須賀くんには、公演がない日も目一杯お仕事があるのに、太一さんとわいわいできるだけの余裕があって、だからこそ太一さんもあんなにくっついていったんじゃないかなって。須賀くんありがとう。毎公演、最後の太夫と兵庫のやりとりを飽きもせず見ていられたのは上弦だけで、それはやっぱり須賀くんのお芝居の説得力がケタ違いだったからだと思う。

最初から最期まで、須賀くんは兵庫としてのアイデンティティを確立し続けるだけに留まらず、太一さんの2017年MVPまでとってしまった。本当に、須賀くんがいてくれてよかったな、ってカーテンコールでわちゃわちゃしてる太一さんを見るたびに思った。あのお化粧で笑ってる顔、すごく好きだ。


太一さんって、独自の役解釈方法論がある人だと思う。私はそのメソッドにすっかり慣れてしまっているから、上弦天の芯というか軸を見失うことは一度もなかった。というかむしろ、このメソッドを通すことで初めて『天魔王の見方』を知ってしまって、周回遅れでワカを被弾する羽目になった。

ワカドクロはWOWOW放送で一回、ゲキシネで一回見たことがあったけど、正直あまりピンと来るものがなくて、蘭がもののふとして死にたがっていたこととその願いが成就したことが、私が蘭を好きだと思える唯一の要素だな、と思った。私は初志貫徹の人が好きだから。

そんな久しぶりのワカゲキシネで、ワカクラスタの人たちが言っていた「ワカ天魔は誰より三人でいた過去を尊んでいる」ということがすとん、と腑に落ちてしまった。これはどう考えたって太一さんが天魔王を演じたからだ。太一さんのメソッドを通して演じられる天魔王をどう読み解けばいいのか知った私は、過去あんなにも未知の恐怖としてしか捉えられなかったワカ天魔を、すっかり一人の人間として見られるようになっていた。

未來さんのお芝居は圧倒的過ぎたからかもしれない。鳥天魔も表現方法こそ違えど、ずっと圧倒的存在だった。だから、太一さんが天魔王を演じていなかったら、私はずっと圧倒されたままでいたんだと思う。おかげでワカはすっかり恐ろしいものになってしまった。情報量が多すぎる。やっぱり太一さんはすごい人だ。

 

 

【おもちゃ箱と福士くん】
12/10の公演をマチソワ通したのは偶然だった。直前で譲ってもらったチケットで入ったソワレ。そんな巡り合わせの中で見た福士捨の覚醒は、予想よりずっと早いタイミングで、予想よりずっとすごかった。

上弦を役者の年齢層ではなく、物語としての『超ワカドクロ』にしたのは間違いなく福士捨だった。過去から解放される、あるいは解放されないまま、捨之介という名前さえも捨てた歴代の捨とは異なり、福士捨は喪失の痛みと理想論の敗北を目の前にして、なにも捨てられない青年として物語を終える。けれどその未来には、決して大きくはないけれど小さな希望の光が灯っている。この先、どんなにもがき苦しんだとしても、その刃は必ず明日へと向かっている。上弦は、捨之介が若さゆえに傷ついて、若さゆえに明るい方へ向かっていける物語だった。

少し平間くんの話をします。初めて観たのはやっぱり舞台の上で、お芝居も殺陣もとにかく完成度というか、レベルが高くて、さすがアミューズだなって思った。私はアミューズの俳優さんを通ったことがないけど、どの界隈に行ってもここにハマっている人たちがいて、そういう意味でアミューズの人ってすごく信頼できるブランドみたいなものだと思ってた。

だから平間くんが演じる霧丸のことは心配してなくて、だけどこれまで女の子だった沙霧から男の子になった理由は、初日が開けてもどうしても分からなかった。これを示してくれたのも、やっぱり福士捨だった。上弦が持つ捨之介と天魔王と蘭兵衛の物語と、捨之介と霧丸の物語はどちらもこれまでの髑髏城にはなかったものだから、どんなに各々が良くても物語として成立するためには捨之介が必要不可欠だった。それほどまでに、捨之介という男が背負うものは大きかった。

それなのに福士くんときたら。なんというか、すごい生き物だった。板の上も客席も、みんな振り回されてばかりだった。物語の筋書き通りに動いていた公演前半でも時折突拍子もない姿を見せていたし、アドリブが解禁された後半は髑髏イヤー初の『贋鉄斎を振り回す捨之介』が生まれてた。しんぺーさんは物凄く回収がんばっていたけど、あれはどんなにアドリブ上手い人だって拾いきれない。それこそ暗闇から殴られるようなものだ。お芝居全体として小休止になるシーンではあるけど、あんなに力が抜けるシーンになると思わなかった。

でもそれも私は何故だか嫌な感じはしなくて、おまけに振り回してる本人はけろっとした顔して笑ってるから、なんかいいかなぁって気持ちになる。0番の力だ、としか言いようがない。天性の才能には勝てない。そんな福士くんに、時には客席にまで喝を入れてくれる平間くんがいてくれてよかったと本気で思った。捨之介に霧丸が必要不可欠だったように、福士くんと上弦には平間くんが不可欠だった。平間くんあってこそ自由を謳歌し続けられた問題児チームの上弦の顔は、誰よりも自然体で自由だった福士くんだ。


私は怠惰な人間なので、気持ちがいいことが好きだ。頭を使うのは気持ちがいい。その快感を求めて今日も今日とて劇場に通う。それが3ヶ月間、ちょっとバカみたいな頻度で通った豊洲への道のりだった。

一つとして同じものがない。舞台というジャンルにおける必然であり、まま未成熟である様を指される。後者の意図を含む指摘は正直どうでもいい。私にとっては毎回すべてが13324円払っても構わないと思えるものだったし、同じでないということは絶えず頭を使うということで、つまり上弦を観ている私は毎回バカみたいに気持ちがよかった。

視覚で得た情報から読み取って、あるいは過去の記憶と照らし合わせて、あるいは誰かの思考から生まれる世界と組み合わせて。来る日も来る日も板の上に生きる人間の心を紐解こうと躍起になった。それが正解かどうかなんて関係なくて、自分の中でそうなのだと自分を論破して納得させられればそれでいい。

板の上にいるのは、役であって役者だ。だから紐解きたいものは役の心も役者の心も全部一緒。どうして今日はそんな風に言ったの。どうして今日はその色を唇へ塗ったの。頭を使って考えられるものは無限にあった。あの世界は私にとっておもちゃ箱だ。気持ちがいいことの溢れたおもちゃ箱。とにかく遊びで溢れていて、目についたものは片っ端からひっくり返していった。毎回ぐっちゃぐちゃ。だから最後は、片付けないといけない。

まだまだ遊びたい。遊べてないおもちゃも沢山ある。なんで片付けないといけないんだろう。楽しいことに水を差されるのはいつだって嫌なきもちだ。でもあの日、いやだなぁって思う私の目が、少しずつ覚めていく時間があった。
「この髑髏城、みんなで生きて抜け出して、また会うぞ」
もしかしたら言えないんじゃないか。そう思った。あまりにも長すぎる間に、それまで自分と役との感情を爆発させていた彼には、終わりを示すその言葉が言えないんじゃないかって。プロとしてありえないことだけど、彼ならもしかしたらと思ってしまったのは、彼が未熟だとかいうことではなく、そう思わせるような役であり役者であると、私は3ヶ月の間に何度も何度も『彼ら』の心をそう紐解いていたからだ。だから絞り出すようなその言葉は台詞だけど台詞じゃなくて、同じように彼もいやだなぁって思ってるのかもしれないな、と考えた。私は自分が導き出したその回答に、そうかまたこの人たちに会うために終わらなきゃいけないんだな、と納得させられた。今までがそうであったように、今日も頭を使って着地点を見つけられたから、これでおしまい。

おしまいが見えたら、途端に今まで一度も考えたことのなかった『座長』という言葉が頭に浮かんだ。そうか、この人座長だったんだ。私のだいすきなおもちゃ箱の、真ん中にいる人。そんな人が言うんだもん、それは正解だよなぁ。また一つ納得。

楽しかったなぁ。次はなにで遊ぼうかなぁ。私のおもちゃ箱は私だけのものなので、気が向いたらいつでもひっくり返す。とりあえず今日のところは、全部片付けておしまい。ばいばい、またね。