愛より重くて恋より軽い

2020年初観劇＆推し現場初めで大勝利を遂げてしまったおたくです。私は今後生瀬さんに足を向けて眠れない。

【公演情報】

KERA CROSS「グッドバイ」

原作：太宰治（「グッド・バイ」）
脚本：ケラリーノ・サンドロヴィッチ
演出：生瀬勝久

キャスト
田島周二：藤木直人
永井キヌ子：ソニン
田島静江：真飛聖
大櫛加代：朴璐美
水原ケイ子：長井短
 青木保子：能條愛未
草壁よし：田中真琴
田島幸子：MIO
田島福子：YAE
清川：入野自由
水原健一：小松和重
連行：生瀬勝久

演奏（Vn）：杉田のぞみ

【公演日程】

2020年1月11～13日　かめありリリオホール（東京）
2020年1月16日　　　山形市民会館（山形）
2020年1月18日　　　長岡市民劇場　大ホール（新潟）
2020年1月21日　　　ＪＭＳアステールプラザ　大ホール（広島）
2020年1月23～26日　梅田芸術劇場　シアター・ドラマシティ（大阪）
2020年1月28日　　　香川県民ホール　小ホール（香川）
2020年1月30～31日　日本特殊陶業市民会館　ビレッジホール（愛知）
2020年2月2日　　　パルセいいざか（福島）
2020年2月4～16日　シアタークリエ（東京）

https://www.keracross.com/goodbye0831

田島周二は、妻子を田舎に残し東京で暮らす雑誌編集者だが、その体裁の裏では闇商売で儲け10人もの愛人を抱える不埒な男。
しかしそんな田島もいつしか、妻子を東京に呼び寄せ女たちと別れようと思い始めたそんな折、怪力で大食いの美女・永井キヌ子と出会ったことから珍騒動が展開してゆく……。

かめあり初日観た幕間の私「勝訴！！！！！！！！！！！勝訴です！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「幕間だけどこれは勝った！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！」
「圧倒的勝利すぎて震えが止まらないえっマジかこれは勝ったわ」

どんだけ勝利を噛み締めてるんだって話なんですけど、実は私KERAさんの作品って初めてで、自分に合わなかったらどうしよう……能條さんがオーディションで勝ち取ったこんなに大きい作品を好きになれなかったらどうしよう……チケットめちゃくちゃ取ったんだけど……と不安いっぱいだったんです。珍しく。推しの大きな仕事は絶対に当たってほしいという気持ちが強すぎる。
声を大にして言おう。グッドバイ、めちゃくちゃ面白かった～～～～～～～！！！！！！！！
セットも演出もオシャレで、かと言って作品の世界観というか時代設定を壊すこともなくて、愛人とお別れする話なんだけど暗くないどころか何度でも笑えて、出演者みーんな大好きになって帰れる舞台！！！！！！！上の三連は幕間のツイートだけど、実際オープニングの時点で完全に勝ちを感じてた。
この作品、多ステしまくるタイプの舞台ではないんだけど、めちゃくちゃ笑えてハッピーな気分で帰りたいな！って時に観てほしい作品でした。私は自分の頭で解釈組み立てるのが好きだから、面白い作品≒多ステしたくなる作品になりがちだし、ハッピーエンド絶対主義でもないんだけど、観てる間に自然と心が解きほぐされてハッピー！やったね！ってなれたので笑

KERA CROSS 第二弾『グッドバイ』ゲネプロ　ダイジェスト映像

前方席と後方席、両方入ったんだけど私が好きなのは後方席。2階建てに屋上がついてる建物の断面みたいなセットに、各階上手と下手へスライドできるスクリーン（原稿用紙！）がはめ込んであって、そこを全開にしたり少し開いたりしながら使ってて。セットの背面は照明によってネオンカラーに光らせることもできる透明パネルが入ってて、その向こうに生い茂る庭の木が見えてる。この中とか外でお芝居してるのが、原稿用紙の上で登場人物たちが走り回ってるみたいに見える世界がすっごい好きだった！
もちろん前方席の方が各々の表情とかよく見えるんだけど、とにかくはちゃめちゃなキャラクターばっかりだったから声だけでも十分成立するし、この辺りがキャストの中に声優業務めてる朴さんとかみゆくんいた理由なのかなと思ったり。
あと、バイオリン奏者の杉田さん。登場人物のようでそうでないことが分かるビジュアルなんだけど、それがセットや演出と同様に作品の世界観にぴったりと寄り添ってて華やかですっごい素敵だった。最近生演奏系の舞台ちらほら見てるけど、見た目も含めて心地良さがあった。

かめありよりクリエの方が劇場の横幅は狭いからめちゃくちゃ密度がある感じがして、特に初日は客席の笑い声がすっごい上がってて、板の上を飲み込んでる気さえしたのがちょっと面白い感覚だったなぁ。
下手側で使ってた階段が無くなったり、三つ子が「一人だけ大きいの」とか暗転してく時の「あれ、暗くなっちゃった」とか、袖に投げ飛ばしてたおいなりさんをそのまま地面に落としていったりとか、細かい変更も結構入ってて、地方細かく回ってるキャストの中に演出家がいるっていうのはこういう時強みになるんだなぁって感じた。忙しい人だと本番始まったら別現場行ってることとかあるしね。

【キャストの話】
去年の夏からなにかと不思議なご縁が繋がってる藤木さん演じる田島、すっごい可愛いんですよ。20人弱くらい愛人がいて、ろくでなしで、狡賢いんだけど、めちゃくちゃ愛嬌があって可愛い。愛人たちも妻もそういう田島の性質が分かってるし、捨てることができるんだけど、決して憎めない奴なのがすごい分かる。
「愛人」って不倫相手とはちょっとニュアンスが違って、家賃だとかの生活を金銭面で支えてるんですよね田島は。だからパワーバランス的には女性たちより田島の方が上だと本人は思ってる。けど実際愛人たちが金に困って田島を頼ってる素振りってなくて、ダメなところがありつつも「愛しい人だ」と思うから一緒にいるんだけど、そういうところに気付かない虚栄心のかたまり。ホステスたちに「そこがいいのよね～」って言われる、愛嬌あってこその役が藤木さんに合ってた。

キヌ子役のソニンちゃんはFACTORY GIRLSに続いての能條さんとの共演だったけど、やっぱりこういう役の方が得意なんだな～って思った。狡賢い田島を憎みきれない愛人たちや観客が「キヌ子かわいいよねぇ分かるなぁ」って心の底から思えることが最重要なんだけど、小池キヌ子見たすぎてどうだろうな～と思ってドキドキしてたから可愛かったことに安心した笑
舞台では出てこないんだけど、キヌ子の汚い部屋の押し入れだったかな？には出かける時に着てた洋服やカバン、靴が収められてるスペースがあるって原作の描写がすごく好きで。キヌ子の洋服パターンがいっぱいあったのが見てて楽しかったなぁ。

真飛さんが奥さんなのになんの文句があるんだ田島！！！ばかやろう！！！でも上手くいかなかったというか、破滅はしていないが円満とも言えず、の理由が二幕の記憶喪失（仮）の田島とのやりとりで分かるんだよね。田島が愛人たちのここが良いと思った理由が各場面で分かるように、静江とのシーンは夫婦が噛み合わなかった理由が分かってくる。静江自体とてもユーモアに富んでる人だし、KERAさんが書いたグッドバイは太宰自身のネタがめちゃくちゃ含まれてるので、オベリスクで連載してるってことはやっぱり作家なんだろうなぁ。

朴さんが女医なのがすっごい良くて、まぁこの愛人たちの中ならこの人かな、って選ばれるのがすごい分かる。口では大勢の中の一人の方が気が楽、って言いながら田島が生きてた！って分かった時のあの泣き方とかが可愛くって、本人が口にするほど大人の恋愛、って感じじゃ全然ないんだよね大櫛先生。静江と大櫛先生はたぶん設定として年齢が近いからか、クリエ公演の二幕ではアイコンタクト取ること増えててセットで好きが増す。
あと、今回女性陣は兼ね役めちゃくちゃたくさんやってて、朴さんがやってた松坂屋の店員さんがまたビジュアル可愛くて好きだったな～～～＼5階でございま～す！！！！／

長井短ちゃん、今回一番好きになってしまった存在だったなぁ。田島とのやりとりと清川とのやりとりでまったく異なる可愛さを見せてくるし、その味わい深さがすごい。うふふ、って笑うのがすごい似合うし、それが可愛く見えるって相当なスキルだなぁって思うから今後もお芝居観たい。お芝居上手い子は兼ね役もしっかり台詞があるので、「大体の占い師」という超重要な役担ってたのが最高だったし、私はたぶん生瀬さんと好きなタイプの役者似てるんだろうなって勝手に思ってた。

清川みゆみゆ…………めっちゃ声通るみゆみゆ……(あたりまえ体操)生瀬さんが今回グッドバイに必要としてた女性陣のタイプが割と同じジャンルの中で味付けが異なる、みたいな感じの中で、もちろん田島とも異なるテンションの清川という役、超責任重大じゃない？？？？？すっごい真面目ですっごい可愛くてすっごいうるさい。可愛い。
日記つけてるエピソードは太宰が愛人静子の日記を「斜陽」の元ネタにしたところから来てるのかな～と思うんだけど、一幕の猪突猛進な勤勉さ・真面目さはそう簡単に変わらないよね、ってにこにこしちゃうくだりだった。短ちゃんの方がちょっとだけ背が高いので、抱きしめられるとすっぽり収まっちゃう清川さん。

グランギニョルぶりの田中真琴ちゃんも、この系統の役がやっぱ合うな～って思う。棒と味は紙一重、っていうかあの透明感があって感情を素直に出してくる空気感を末満さんとか生瀬さんが気に入るの、すごいよく分かる。ホステスと三つ子でMIO・YAE・まこの3人がずーっとちょこちょこ動き回ってるの可愛くてたまらん。

MIOYAEちゃんは本役より兼ね役での出番の方が多いかな？って感じなんだけど、ほんとに田中真琴ちゃんと並んだ時の三つ子感がすごい。表情とか顔立ちに雰囲気があるから、台詞があるお芝居はもちろん台詞のないお芝居の間が独特で、モデルさんのイメージが強かったから尚更びっくりした。
本人の感覚が素直にお芝居に出る3人だったから、地方公演回ってクリエに戻ってきた時の間の取り方とか距離感が「ああ、地方でめっちゃ仲良くなってきたんだな」って感じ取れるのが面白かった。能條さんも大体この3人と一緒にいることが多くて、見た目的にはお姉さんって感じがするのに甘えモード出てたのも面白かったなぁ笑

足を向けて眠れないのは生瀬さんだけじゃなく小松さんもなんだ。持ってるテンポ感が割と女性陣に近くて、肩身狭そうにしながらあの輪の中に溶け込んでるのが愛おしくて。なんかこう、決して善人ではないけど田島よりよっぽど良い人なのが伝わってくる。能條さんが一番お芝居のキャッチボールする相手だったので、小松さんならたとえどんな暴投してもしれっとキャッチしてくれるだろうなって安心感のあるお芝居。

生瀬さんのお芝居、やっぱり好きなんだよなぁ。間の取り方とか、インタビューで藤木さんに言われてた「生瀬さんがやると何をやっても面白い」って空気感が好き。演出家としての生瀬さんがグッドバイに欲しかった要素、他のキャストのお芝居を観れば一目瞭然で、それを能條さんが持ってたことは事実なんだけど、オーディションで能條さんが見せた気合いを面白がってくれたこと*1自体がほんとにもう頭が上がらない。あと地方でラウンドワン連れていってもらったり、とにかくお世話になりまくってたので、今後もいっぱい勉強させてほしい。

能條さん、グッドバイ初演をDVDで観てこの舞台に出たい！って思って自分からオーディション受けたんです。蓋開けて女性陣の持ってるテンポ感見たら共通点があったので、そこを選ばれたんだなってちゃんと納得したけど、自分からオーディション受けに行ってなかったら選んでもらえることすらなかったと思うと、見つけてもらえるのを待ってるだけじゃないとこが好きだなぁって感じた。
青木さん以外にも兼ね役として編集部員、闇食堂の給仕、ボロの青年と幅広くて、多芸っぷりがよく出てたなぁ。公演数を重ねるごとにもっともっと味が出せるんじゃないかって期待できる部分もあったし、演出的にそういう要素を敢えて押さえられてるって感じたから、いい意味でもっと観たい！と思わせられる演出つけてもらってた印象。

かめあり→クリエ間で本人のセリフや周囲からのセリフに一切変更が入ってなかったんだよね、青木さんは。その分、二幕で静江や大櫛先生とのアイコンタクトが増えたり、人の話を聞いてる時のリアクションには変化がついたりしてて、今の能條さんに足りてなくて必要なもの、つまりは個人でのお芝居の情報量を増やすことを課されてたんだよね。生瀬さんにはそういう部分がちゃんと見えてるんだなぁ…って心底思った。カンパニーとして仲が良くて、その雰囲気が劇中のやりとりにも反映されてて、って点でもグッドバイはすごくいい公演だったけど、能條さんファンとしては大きい興行に出られたこと以上に、生瀬さんによる個別指導塾状態でお芝居見てもらえてたことが伝わってきて本当に幸せだった。育てられてる。

よしが「私のせいで田島さん死んじゃったの！」って言い始めた時のザワつき方に明確な時間経過の変化が現れるようになったのはクリエ公演始まってからで、かめありの頃みたいに落ち着きなくそわそわし始めたかと思ったら、みるみる瞳孔開いていって口元を痙攣させたり、グラスの扱いが雑になったり脚組んだり、態度に出てくるようになる青木さん、最高に好きなお芝居だった。
躁状態で「フォウ⤴！」って節つけるとこは最後までクリエよりかめありが好きだったな～～～って思ってたけど、やっぱりクリエ公演で課されたテーマは台詞がない時のお芝居だったんだろうって思った。田島の夢に出てくる青木さんのリアクション明らかに変わってたし。定点しがいのある課題を与えていただき、生瀬さんにおかれましては本当に今後もどうぞよろしくお願いいたします…！！！！

初日に観てから友達とかフォロワーさんにおすすめしまくったら、結構な人が観に行って「楽しかった！」って言ってくれて、推しを見てもらいたい気持ちとつまらないものはおすすめしたくないなって気持ちの板挟みになりがちなおたくは快眠の日々でした。
グッドバイで初めて能條さんを観たよ、って人が少しでも興味持ってくれたらうれしいなぁ。2018年に乃木坂を卒業してから今後のお仕事予定が発表されてない時間記録を更新しそうなので、ぜひ皆も一緒にいつ次のお仕事が解禁されるかドキドキしてほしい笑