愛より重くて恋より軽い

未来の私が読んで楽しいやつ

2015/11/19 TRUMP@ブルーシアター

TRUMP観てきました。公演初日から1ヶ月が経とうとしていますが、未だ繭期が抜けてません。
観劇前はあんなに『拗らせたら厄介そうだ』と思っていたのに、その懸念を見事なフリにした観劇後のすっころびかたが自分でも笑えてきたので、覚えているうちにどんな過程を経て永遠の繭期に閉じこもったのか残しておこうと思います。
びっくりするほど長くなったから日ごとに分けるよ!




初日ステータス

まず、当初予定していた日程は以下の通り。

11/28T
11/28R

両公演陳内推しの友人が確保してくれていました。

TとR両方観るべき、と熱弁されたのでこの時点で2回観劇が決まっています。が、万が一本当に拗らせた場合この日程だと東京千秋楽しか増やせないな?と気付き、初日を追加。
まだ公式のあらすじすら読んでなくて『吸血種』という言葉すら知りませんそれなのに3回。
若手俳優というジャンルに初めて推しが出来て4年ほど経ちますが、『観劇』というものへのハードルなんて最早存在しない。
万が一っておまえそれは未来の自分に向けて罠張ってるんだよ気付いて!!!!!


これだけ自分でお膳立てしてるのに全然響かなかったらどうしよう……と最近の観劇にハズレが多すぎてビビっていた初日の私のステータスがこちら。

  • TRUMPシリーズ初見
  • D2が数年前にやったDステの再演なのは知ってる
  • 「ソフィ」「ウル」「クラウス」「アレン」「ラファエロ」「アンジェリコ」がそれぞれシンメ関係らしい
  • 数日前ようやくあらすじ読んだ
  • まひろとメタルさんとちゃんじんくらいしか知らないなー*1
  • 今回の出演者に推しはいません

なぜわざわざこんなことを書いてるかと言うと、前提条件によって着眼点と感想が全然変わってくるからです。
あとピースピット公演が初演だったこととかこの日はまったく知らなかったので、その辺り失礼があったらごめんなさい知らなかったんです、という旨の予防線でもあります。
周りがDステ観たことある友人ばかりだったので、絶対にネタバレせず観に行った方がいい、と散々言われたため初日明けるまでDVD借りるのは我慢。
あと脚本家の末満さんのツイッターはミュート。
なにせどれがネタバレになるのかも分からないので、近年最も観劇前の情報規制を徹底した結果、3日前くらいにようやく公式に掲載されてるあらすじを読む。そうか、ソフィとウルが主人公なのか。
アンジェリコ好きそうって言われたけどどういう立ち位置なんだろ。友人の推しはクラウスとアレンだったけど、ビジュアルにいるってことはメインどころなのか。*2



一幕終わりました

しんどい。ひたすらにしんどい。
なにがしんどいって、多分後半に明かされるであろうことに気付いてしまった。

クラウスが皆に行方を聞いてる時のアレンと、実際に顔合わせて話してるアレンって、同じじゃない。
アレンの名前を呼ぶ声の感じとか、探し方が全然違ってて、たぶん顔合わせてる方は過去回想かなんかだ。
2回目にクラウスがアレン探してる辺りではっ!!!!!!って気付いちゃったんだけど……アレン死んでるのかなぁ……クラウスがアレンを見ませんでしたか?って聞くたびに皆クラウスのこと可哀相な人って思いながら「見てない」「どこにいったんでしょうね?」って話合わせてあげてるのかな………優しいな……

正直ちょいちょい挟んでくるギャグがまったく面白くなくてしんどいんだけど、この前観た夕陽伝もこんな感じでギャグ挟んできてたし、やっぱり末満さんがこういうの好きなんだなぁ。
Dステ観てた人的にはあのダリちゃんコールとか楽しいんだろうけど、身内感あるとそれに乗れない方は一気に苦手感出るんだよなぁ。もやもや。
いやしかしそんなことに引っかかってる場合じゃないくらいクラウスしんどい。
あと通路近かったからアレンがすぐ横通ったんだけどめっちゃかわいかったなにあれ。



二幕終わりました

TRUMP最高すぎて地獄。*3
えっと、私は常々創作における「人が死ぬのはハッピーエンドじゃない鬱だ」みたいな感じの論調が大っ嫌いで、このまま生きるよりここで死んだ方が彼/彼女にとっては幸せでハッピーエンドってこともあるんだよ十把一絡に鬱とかメリバとか言うんじゃねぇ論者だったので、まずなにより刺さったのは『死生観』。
死ぬってとても呆気ないことで、残された者の方がずっと辛くて、生きてることこそ地獄なんだ。クラウスとソフィがまさにそれ。
あと生粋のオタクなので自分の大好きなものが完結してしまうことを寂しく思うところがあって、ああこの美しくて辛くて苦しい世界には終わりがないんだ、と思うと絶望以上の歓喜を覚えてしまって。
たとえ他シリーズで彼らの行く末が描かれることがなくてもその旅路は続いているんだ、という事実が先の死生観どんぴしゃだったことと相乗効果で、幕が下りてもしばらく立ち上がれず。



陳内くんのこと

クラウスのこと一幕では友人の推しだということもあって目で追ってるって感じだったのに、二幕からはもう完全にお芝居に引き込まれてしまって………幕が下りて覚束ない足取りで劇場を後にしながら

「ねぇ推しがクラウスとアレンやってるってどんな気分?ねぇどんな気分?」

って能面みたいな顔して連れ(陳内推し)に10回くらい聞いてしまった。

陳内くんのお芝居観るのは初めてではなくて、でも観る度に感じる不思議な感覚がずっと言語化できなかったんだけどようやく分かった。
彼の所属しているナベって基本的な演技メソッドが決まっていて、色んな役者がその同じライン上で違うポーズ付けてる感じだという認識を個人的に持っているんだけど、彼はそのラインに爪先だけ引っ掛けてぶら下がってるようなイメージなんだ。
ここでいう『演技メソッドが決まっている/同じ』というのは、皆芝居が似たり寄ったりだということではなく方向性が同じだ、という意味で、彼もそこから外れてはいないんだけど、自分の色で付けたポーズが全面に出ていてメソッドは根幹の辺りで静かにしてる感じがする。

彼のお芝居が好きだな、とすぐに思ったのは多分過去の推しがナベ所属だった私にはその根幹にあるメソッドに馴染みがあるからで、でも今まで好きだなって思った役者みたいにどの表現が、とかどの表情が、みたいな言語化が難しい。
それは私が彼の人となりやこれまでの経歴に明るくないということを差し引いても、板の上に立つ彼からはあのクラウスの芝居を作るために内から出てくるべきものが全然見当つかないから。なんだあれ。

クラウスという役柄的にも役者一個人としても、ああいう演技を作り上げられる経験とか感性とかの起因が全然見えない人で、こんなに凄い役者で、でもその凄さの起点が芝居からは全然分からない人を応援してるってどんな気持ち????ってほんとに分からなくて知りたくて聞いてたんですが傍から見たらただの煽りでした。ねえどんな気持ち?ねえねえどんな気持ち??



高杉くんのこと

まひろは特撮以降も八犬伝とか舞台作品いくつか軽く観てたんだけど、高杉ウルがどうなるのか全然想像できないくらいソフィが最高で、まひろの繭期が終わる前にこの作品に出てくれて本当に良かったと思います美少年よどうか大きくならないで。

運命に翻弄される揺らぎと儚さを持ちながらストーリーの中心で存在感を放つ主人公感というか、あれは本人の素養だなぁと思うと本当に彼の繭期が終わる前にソフィに出会ってくれてよかったよ……
一幕はキャスト全体的にイマイチ声出てなかったなぁと感じて、その一端だったのかもだけどソフィの『なんなんだよ!』って台詞が今まで聞いたことないニュアンスのまひろでおお、って思いました。
ああいう『初めて』に触れるとやっぱり舞台ってナマモノで、そこがいいんだよなぁって改めて感じました。


なにをもって完璧と呼んでいるのかは私自身も分かってないんだけど、陳内クラウスと高杉ソフィが初めてのTRUMPで本当に良かった……この組み合わせは多分私にとって至高だ……



物語のこと

とはいえ前述のエンタメ作品としてのカタルシスに浸りすぎて特にクライマックス辺りはセリフや芝居を噛み砕ききれなかった部分もあったわけで。

瀕死のソフィを目の当たりにしたクラウスの『永遠の友』『ずっと一緒だ』はアレンとして見ているソフィに告げているのか、それとも本当にアレンへ告げているのか、そのどちらとも取れる含みを持っていたのか。
目の前で起きる事態を処理してながらでは噛み砕けなくて、次回はそこをちゃんと判断したいところかなぁと。
あと最後にクランがどうなっていったのかもイマイチ把握できてなくて、あれ、結局なんでクランは退廃してしまったんだっけ……?(軽い記憶欠如)
とにかくあの混乱の最中でクラウスがどこへ消えていったのか、何故消えていったのか、その辺り消化不良のような気もするし、いわば同じ不老不死の存在がこの世のどこかにいるという確証が、クラウスにとっての『永遠の友』であり救いだったのかなぁ。

ギャグシーンはとにかくほんとにギャグだったからあそこで触れられてることを欠片でも信用していいのかよく分からないし、「人間で言う思春期」という言葉をそのまま受け止めていいのかも未だに迷っているんだけど、繭期の最も顕著な症状が個々に違うのならアンジェリコ/ラファエロは『自意識過剰』、ソフィ/ウルは『自惚れ』ってとこだろうか。
特にラファエロの『守護者』っていうあれは家督を継ぐ者としての自負なのか、兄としての使命感なのか、はたまた文字通り自身はそういう存在であるのだという思い込みなのか、ラファエロとアンジェリコの関係性を考える上でも解釈変わってくるところ。


TRUMPは作中に出てくる対の2人はどのペアも執着する者/される者の関係だな、というのが印象で、それはたとえ繭期(思春期)であっても恋とか愛とかいう括りに収まるものではなく、力・才能・人望・資質・選ばれる者のなるための条件といった『なにか』を持つ者/持たざる者の話だと思っていて。
各々のペアに目を配る度に物語が刺さりまくってるのに、これでLILIUM観たら私にはこのシリーズが今以上に刺さる可能性が高いのです。
だってイクニイズムで育ったウテナ信者だからさ私!!!!!!!*4






というわけでぐだぐだ感想語りながら呑み屋でLILIUMとSPECTERのDVD注文しました。
だってチケット足すより安いから。TRUMPをよりいっそう考えるためには世界観を深く知る方が大事かなぁと思って。
私にとっての観劇は頭使ってる方が話にのめり込めるし、仕掛けに気付いた瞬間の感覚が好きなので、初見とか初日のあの次の展開を予想したりシーンの繋がりを考えたりしながら観る感じが好きだなぁと再確認したTRUMP初日覚え書きでした。千秋楽までの道のりが遠い。

*1:実際はAZUMIで早乙女くん観てるし幻の城で匠馬くん観てるとのちに知る

*2:実際に公演観てからだと想像してることの内容がいっそ微笑ましいレベルなのだけれど、これだけ情報少ない状態で劇場に向かうの久しぶりだったので、色んな想像を膨らませることが出来て楽しかった

*3:当日のツイートママ

*4:幾原監督作品『少女革命ウテナ』第20話「若葉繁れる」